法務局における「自筆証書遺言書保管制度」について教えてください
2025/11/3
2020年7月10日から始まった「自筆証書遺言書保管制度」は、自筆で書いた遺言書を法務局で保管してもらう制度です。
この制度の大きな利点は、遺言書の安全な保管と相続手続きの簡略化にあります。自筆証書遺言書が法務局で厳重に保管されるため、紛失や偽造、破棄といったトラブルを未然に防げます。
また、通常、自筆証書遺言書は、相続開始後に家庭裁判所の検認手続きが必要ですが、この制度を利用すればその手続きが不要になります。これにより、相続人の負担が大幅に軽減されます。さらに、特定の相続人が遺言書の保管事実を証明書で確認すると、他の相続人全員にもその旨が通知されるため、一部の相続人が遺言書の存在を隠すことを防ぎ、相続トラブルの防止にもつながります。費用についても、公正証書遺言に比べて安価な点もメリットです。
利用手続きは、まず自筆で遺言書を作成します。用紙のサイズや余白など、一定の様式があるため注意が必要です。その後、遺言者本人が、住所地などを管轄する法務局に直接出向き、保管の申請を行います。申請時には、顔写真付きの本人確認書類(マイナンバーカードまたは運転免許証)と、本籍地の記載がある住民票などの書類が必要になります。
ただし、法務局は遺言書の内容が法的に有効かどうかを審査するわけではないため、遺言の内容に不備があると無効になる可能性がある点には注意が必要です。
執筆者 司法書士 岩井哲也
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